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寅さん好きでないと面白くない話
なんか『男はつらいよ』の話題ばっかり続きますが。。。。今日は『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のはなしです。

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『男はつらいよ』は全部で48作。その25作目がこの映画です。

マドンナは浅岡ルリ子。今までリリーという名前で『寅次郎忘れな草』(第11作目)『寅次郎相合傘』(第15作目)にも登場しています。寅さんと愛し合った数少ないマドンナです。
これらは「リリー三部作」と呼ばれ、絶大な人気を誇っています。というか後の二作はクオリティが高すぎます。おかしいくらい!!

そうそう、こなないだのブログから言っているように、『男はつらいよ』のキャストというか作品が最も成熟しているときでもあります。特に15作目以降のクオリティには目を見張るものがある。間の取り方、セリフ、演出、どれをとっても抜かりない感じです。それでいて程よく適当。

実は去年くらいから『男はつらいよ』シリーズを一作目から見返しているんです。今までバラバラに見てきたし、父親が何故あんなに好きなのかも解からなかったからです。

中学のとき、父親に勧められこの『ハイビスカスの花』を見ました。いい映画だと思ったのを覚えています。

しかし、今回12年ぶりに見て、『馬鹿やろう!!こんなん中学生にわかるわけないやん!!』と父親に言ってやりたくなりました。

まず、DVDを借りたんですが、『男はつらいよ ハイビスカスの花 特別編』なんですね。いきなり成人になった満男が登場します。この作品は渥美清追悼の意味を込めて再編されたもので、最初と最後に満男が出てくるんです。そして寅さんとリリーを回想して映画が始まります。そこで『忘れな草』と『相合傘』の映像を出すから反則!!映画の最初のほうなんて自分自身が映画に入ってないので、画面に集中していません。風景としてのテレビ画面です。なんとなく映像が流れているんですが、風景としてしか捕らえていないはずなのに、その過去の2作品の映像がちょっと流れただけで何故か涙が溢れます。「なんだこりゃ~~!!」無意識のうちに映像が感情に食い込んできます。こんなことは初めてでした。ある意味トラウマなんでしょう。

『忘れな草』はともかく、『相合傘』はリリーが昔から知り合いの女でどーのこーのというバックグラウンド云々抜きにしても、その映画自体で完結しています。それは寅さんとリリーの関係が『忘れな草』の最後でリリーが結婚して堅気になることによってリセットされているからでしょう。

リリーは寅さんを愛しています。しかし寅さんはビビるんですね。『寅次郎夢枕』の八千草薫も寅さんに惚れます。その時も寅さんはビビって逃げるんです。

私はとにかく『ハイビスカスの花』の寅さんにはイライラしっぱなしでした。リリーがプロポーズしてるのに逃げようとします。

怖いとか、ヤクザな自分が人を幸せに出来るわけがないとか、もっと他にいい男が居るに決まってるとかそんな問題ではなくなっているんです。

そして最後に寅さんはリリーの気持ちがなんとなく解かってリリーにプロポーズするんです。「俺と所帯持つかあ。」と。でも遅いんですね。リリーの中で寅さんは夫ではなくなっていたのでした。

もう久しぶりの号泣映画でした。オープニングで本編に入ってないのに号泣です。病院でリリーと寅さんが再開するシーンでも号泣です。沖縄の民家の前でリリーが寅さんを待っている姿だけでも号泣です。

こんなん中学生の自分に解かるわけないやんけ!!男女の深淵やんけ!!

坂本九が歌うように、タイミングが何より大切なんですね。愛し合っていた二人が、愛を確かめ合うタイミングを逃してしまい離れていく。まあよくあることなんでしょうけどね。でもこの映画はあまりに重いです。

結局沖縄で『夢』を見てたんだってくくってしまうんですが、御前様の言うとおり、「生きてる間が夢」なのかもしれません。それと一緒で私はきっと「夢」を見ていたとかそういう問題ではないように思っています。「朝起きて寅さんが来てくれたのが夢だったらどうしよう」というセリフが物語るように、本当に恐ろしい脚本です。ここで見る人に二通りの答えを授けるんですね。

浅岡ルリ子の演技にも脱帽です。あんな複雑な女の気持ちを読み取らせるなんて。。。。すげー!!


そして、なにより悲劇的なのは最後のシーン。田舎の山奥でリリーとばったり再開するんですね。そして同じバスに乗っていく!!もうこのとき二人は夫婦から遠いところに居るわけです。もうよくわからん!!

寅さんを見ていると、人間にとっての幸せとは何なのか考えます。家庭があることが幸せなのか、自分の気の向くままに生きることが幸せなのか。そのはざ間で寅さんとリリーは苦しむわけです。


どーん!!もうわけわからん!!なんでこんなにも報われへんねやろうか!!しかし報われようとしてないのは二人自身であって、幸せが逃げていくわけではなくて、幸せを逃がしてるんでしょうね。

と思ったらフラッシュバック現象。トリュホーのドワネルものの最終作『逃げ去る恋』のラストを思い出します。過去がば~っと回想されるんです。

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by sasatani-chez | 2009-11-22 00:04 | 映画や音楽
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ササタニーチェが聖地を巡礼する。
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